漢方薬について

通常病院で処方される薬は「西洋薬」がほとんどで、これは「西洋医学」という言葉に基づいています。
しかし、ここ近年、「東洋医学」に基づく「漢方薬」の効果効能が見直されてきています。
では、西洋薬と漢方薬の違いとはなんでしょうか?
通常西洋薬では西洋医学に基づいて診断を行います。診断が「高血圧」であれば、当然血圧を下げる「降圧剤」が処方されます。多くの場合薬の成分は単一であり、体の中で血圧を下げるような働きをする効能のお薬が選択されます。西洋薬は日々研究開発がなされており、まさに日々進歩していく「近代医学」とも言えます。
これに対し、東洋医学は2000年以上の歴史があり、処方は長い歴史が積み重ねた経験則に基づいています。
実は東洋医学には西洋医学で名付けられるような病名の概念が実はありません。例えば、2000年前という血圧計のない時代に、「高血圧」という病名が存在するわけがありませんね。では、昔の人はどのように漢方を選択したのでしょうか?
東洋医学の場合、「気」「血」「水」などの独特の尺度があります。これらが過不足無く、滞りの無い状態を「中庸(ちゅうよう)」といいます。東洋医学では病気の原因はこの「中庸」の状態を保てないことからくると考えられており、漢方薬は、体をこの「中庸」の状態に持って行くことを治療の目標としています。従って、東洋医学的診療は、この独特の尺度を測っていくわけですが、そのための近代的な検査・道具を必要としません。問診、脈診、舌診などを重視するのが特徴です。無論、採血やレントゲンなども必要としません。
また、西洋薬がほとんどの場合、単一の成分であるのに対し、漢方薬は「複数の生薬の組み合わせ」になっているのが特徴です。古代の人が生薬を組み合わせてみた結果として、効果・効能の増強を確認したという、試行錯誤の長い歴史の積み重ねによるものと捉えることができます。
このように、西洋薬と漢方薬はいわば概念や性格が異なる薬とも言えますが、考え方が異なるが故に、西洋薬でカバーできない症状を解決できる可能性も秘めているとも言えます。
現在は、約150種類もの漢方薬が健康保険で使う事ができます。当院は西洋医学に基づく診療を基本としますが、漢方薬のこうした特徴をうまく取り入れる事で、患者さんの症状の軽減に努めていきたいと考えております。