慢性上咽頭炎とは
上咽頭という、鼻の奥の突き当りの別名鼻咽腔とも呼ばれる場所があります。呼吸する度に空気が通るため、空気中のゴミや細菌、ウイルスが付着しやすい場所です。上咽頭は生体防御能の最初の要として体を病原体から守る機能を果たしています。
上咽頭は口を開けて見える喉の部分とは違い、目視することができないため炎症を起こしている場合にも気づかれず放置されているケースがあります。耳鼻咽喉科では、内視鏡(ファイバースコープ)を用いて直接上咽頭の状態を確認できるため、耳鼻咽喉科医院以外で「異常なし」と言われた方でも、上咽頭に炎症が見つかることがあります。

慢性上咽頭炎とは、上咽頭が慢性的に炎症を起こしている状態で、のどの違和感や長引く咳などの症状として現れます。風邪をひいた後にのどの腫れは引いているのに症状がなかなかよくならない場合は上咽頭にまだ炎症が残っているというケースがよくあります。
Bスポット療法とは
Bスポット療法とは綿棒を使って上咽頭に直接お薬(塩化亜鉛)を塗布する治療法です。EAT、上咽頭擦過療法と言われることもあります。治療時間は数十秒で終了しますが、上咽頭の炎症部分に直接薬と塗るため痛みを伴い出血することもあります。
Bスポット療法の対象となる症状
- 上咽頭炎
- 長引く咳、痰がからむ
- のどの違和感
- 後鼻漏
- 耳の詰まり感(耳閉感)
- 頭痛、頭重感
- 肩こり、首こり
- 掌蹠膿疱症
- IgA腎症
Bスポット治療は直接のどに関わりのない症状に対しても時に有効であるとされています。なぜBスポット治療がそれらの疾患の治癒に効果があるのか医学的には証明されていませんが、お困りの症状があり、上咽頭に炎症が認められる場合はBスポット治療を実施しております。そのため当院ではBスポット治療は補助的な治療だと考えており、各症状に対しての検査や治療も同時進行で継続をお願いしています。
Bスポット療法の通院頻度
軽い風邪症状であれば1度行い終了の場合もありますが、慢性的な症状の場合や、上咽頭の炎症が強い場合は、週1~2回程度Bスポット治療を継続的に実施することを推奨しています。経過を観察しながら実施しますが、症状が慢性化している場合は10~20回程度治療する場合もあります。
治療効果は適宜ファイバースコープで上咽頭の状態を確認し、その後の治療計画についてご相談いたします。
Bスポット療法の注意点
- Bスポット治療後数時間~1日程度痛みが続くことがあります。上咽頭の炎症が強いほど痛みが強くなる傾向にありますが、治療を継続するにつれて徐々に痛みが少なくなります。
- 治療後に患部から出血し血の混ざった痰や鼻水が出ることがあります。一時的なものですのでご安心ください。
- 稀に治療前よりも一時的に症状が重くなることがあります。上咽頭の炎症が強いため治療による刺激で起こると考えられます。基本的にはその場合も継続治療をおすすめしますが、症状の変化については医師にご相談ください。
- Bスポット治療は補助的な治療であるため、現在受けているネブライザー治療や投薬治療は継続してください。
- 適応の症状がある場合もBスポット治療が適した治療ではない場合があります。医師の診断によってご希望の場合も実施できないケースがあることご了承ください。
新型コロナ後遺症(LongCOVID)について
新型コロナウイルス感染後、コロナは治っているにも関わらず、体のダルさ、疲労感、集中力の低下やめまいなど様々な症状に悩まされる方がおり、社会問題となっています。新型コロナ後遺症と呼ばれていますが、実際なぜそのような症状が続くのかは医学的に解明されてはいません。
ウイルス性の上気道炎を発症した後に、ウイルスが消失した後もしばらく倦怠感や頭痛、めまいなどの症状が続くことがあり、その際にBスポット治療が有効な場合があります。当院では、それにならって新型コロナ後遺症の方に対してご希望に応じてBスポット治療を行っております。
新型コロナ後遺症の症状
- 倦怠感、疲労感
- 喉の違和感、咳
- 頭痛
- 継続した微熱
- 集中力の低下
- めまい、耳鳴り
- 動悸息切れ、呼吸の苦しさ
- 味覚障害、嗅覚障害
全ての症状に対してBスポット治療が有効とは言えず、Bスポット治療によっての効果も個々に違います。そのためまずは検査を行い、必要に応じて漢方の処方やビタミン剤、亜鉛等の処方も行います。気になる症状があればまずはご相談いただければと思います。